統計検定2級を受けてきた
情報処理技術者試験に若干飽きてきたので(?)受けてきました.
概要
「大学基礎科目レベルの統計学の知識の習得度と活用のための理解度を問うために実施される検定」だそうです.
試験範囲は,多くの大学で1,2年次に教養科目として開講されている「確率論」と「統計学」の内容におおかた沿ったものとなっています*1.
また,2級と3級については,PBT(マークセンス方式の筆答試験.6月と11月の年2回開催)に加え,CBT(コンピュータに解答を入力するタイプの試験.随時開催)も用意されているので,わりと気軽な気持ちで受けられるかと思います.
出題傾向
上で述べたように,大学教養レベルの統計が範囲です.
特に,
- データの分析,可視化(度数分布表,ヒストグラム,箱ひげ図等)
- 高校レベルの確率計算,ベイズの定理
- 標本調査の方法,実験計画
- 確率変数,確率分布の性質と平均,分散等の計算
- 統計的推定(点推定,区間推定)
- 統計的検定(z検定,t検定,x2検定等)
- 回帰分析
あたりは押さえておくと良いでしょう.
経緯
そもそも大学の専門はコンピュータサイエンスだったので,統計学は教養でちらっと学んだ程度でした*2.
数ヶ月ほど前に統計学に興味を持ち始めたのですが,Web上に落ちている記事をいくつか読んだだけでは体系的に知識を得るのが難しいと考えていたところ,ある勉強会で統計検定を知りました.
巷には,「なんとなく」統計・機械学習の技術が使えるようになるライブラリやフレームワーク等がありますが,やはり理論的な背景もある程度知っておきたいと思い,そのためにはとりあえず大学教養レベルからちゃんと学び直す必要があると感じていたので,いい機会だと思い,受験を決めました.
やったこと
2017年3月
この時点では,2-3週間ほど勉強した上でCBT試験を受けようと思っていた.
とりあえずテキストと過去問を買う.
- 作者: 田中豊,中西寛子,姫野哲人,酒折文武,山本義郎,日本統計学会
- 出版社/メーカー: 東京図書
- 発売日: 2015/12/10
- メディア: 単行本
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以前の記事でも言及したが,このテキスト,解説に不十分な箇所が多く,あまり評判がよくない.
結果的にこのテキストはあまり使わず,試験日前日に試験範囲の勉強に漏れがないかチェックするためだけに使った.
日本統計学会公式認定 統計検定 2級 公式問題集[2014〜2016年]
- 作者: 日本統計学会
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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日本統計学会公式認定 統計検定 2級 公式問題集[2013〜2015年]
- 作者: 日本統計学会
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2016/03/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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逆に,こちらの過去問*3は,実際の検定の問題とその簡単な解説を並べている,非常にシンプルで読みやすい本だった.
これを数回回して,理解が十分でない点を他の参考書等で補うのが基本的な学習の流れになるかと思う.
また,一読すれば,ここ数年は回を経るごとに問題が難化する傾向にあったことと,推定・検定からの出題が減って,確率分布についての出題が増えていることも見て取れるか.
2017年4月
若干仕事が忙しくなり,ズルズルと受験を引き伸ばしていた.
こういう時,「いつでも受けられる」試験は申し込みボタンを押すまでのモチベーションが保てないので厳しい.
そうこうしている間にいつの間にか6月のPBT試験の受付が始まっていたので,えいやで申し込む.
2017年5月
GWで英気を養ったので,勉強を再開.
せっかくやるからには,ただ問題を解くだけでなく数学的な背景も知りたいと思ったので,統計入門の名著である「赤本」を買った.
- 作者: 東京大学教養学部統計学教室
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 1991/07/09
- メディア: 単行本
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評判通り,基礎教養としての統計学として学ぶべきことが過不足なく体系的にまとまっており,昔受けた講義の内容を思い出すのに役立った.
決してカンタンに読み進められる本ではないが,出て来る数式についてはわりと補足があり,必要に応じて例示によって理解を促す構成になっているので,自分のような数式が苦手な人間にもありがたい.
統計検定2級と範囲がかぶっているので,これを一読した上で過去問を解いていくだけで合格点を取れる実力は十分につくかと思う.
一点いちゃもんをつけると,回帰分析についての内容が十分でなく,分散分析は内容に含まれていないので,そこはWebページや他の本で補う必要がある.
また,計算問題を解くに当たって,家に眠っていた
スバラシク実力がつくと評判の確率統計キャンパス・ゼミ (大学数学「キャンパス・ゼミ」シリーズ)
- 作者: 馬場敬之,久池井茂
- 出版社/メーカー: マセマ出版社
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の演習問題を使った.
検定の問題では,計算問題がそれなりに出るが,これが結構面倒で,どうしても計算ミスが多くなってしまう.
特に,分散・共分散の計算では,計算式をうまくいじくることで計算過程を大幅に省略できることがあるので,実際に練習問題にあたって式を追っておくことは重要だと思った.
Webページとしては,
が,統計検定2級の範囲を網羅しており,解説も具体例をベースとした非常に理解しやすいものであり,非常にお世話になった.
自分は気づくのが遅かったので実行しなかったが,このページベースで学習を進めるのは大いにアリだと思う.
2017年6月
試験場には「四則演算(+-×÷)や百分率(%)、平方根(√)の計算ができる一般電卓又は事務用電卓」の持ち込みが認められているが,電卓が家にないことに気づいたので買った.
キヤノン12桁大型卓上電卓 HS-1201T 抗菌仕様 フラットデザイン
- 出版社/メーカー: Canon(キヤノン)
- 発売日: 2009/08/30
- メディア: オフィス用品
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電卓使うのすごく難しかったのでたぶん自分はデジタルネイティブ世代なんだと思う…
試験当日
某大学での受験だったが,入口の門がことごとく閉まっており,入れる入口を探し回ったことからわりとギリギリの到着になってしまった.
全体的には,2016年の試験より簡単に感じられた.
重箱の隅をつつくような出題が減り,基本的な知識を問う問題に回帰しているような気がした.
一問,例年の傾向から外れて分散分析の範囲から問題が出題されたが,ちょうど直前に対策をしていたので解くことができた.ラッキー.
結果
数日後に正解が発表されるので,自己採点してみたところ32/35.
6割が合格ラインとされているので,マークミス等なければ合格はしたかな,と思っていました.
およそ3週間後にWebでの合格発表がありました.
統計検定では,最優秀成績者に評価S,優秀成績者に評価Aの評価と表彰状が与えられますが*4,評価Sをいただくことができました.
こんな感じでした.
全体的な感想として,表面的に教科書を読んでいるだけでは理解できない,しかしよく本質をついた問題が出題されていたように思います.
特に,データから特徴を見抜いたり,世の中によくある試行からその確率分布を導く問題などは,数学の世界と実世界を結びつける,良い問題だと感じました.
受験後,ちらっと準1級の問題を見てみましたが,やはり結構難しそうなので,2級から受けてよかったと思っています*5.
少しづつ統計の知識も身につけていきたいです.
*1:なので,学生であれば,講義内容の予習,復習がてら受けてみる,という使い方もできるかもしれない.逆に,この辺の講義を受けたことがない人がそのまま2級を受けるのは少し厳しいので,自習するか,3級からはじめることを勧める.
*2:学士・修士の研究でちょっとだけデータまとめをした程度.
*3:過去問については,http://www.toukei-kentei.jp/past/#pastpaperに過去1回分がUPされる.世の中にはInternet Archiveというモノがあっておっと誰か来t(ry
*4:こういうの,他の検定試験ではあまり見かけない気がする.
*5:準1級から上はPBTのみで,かつ年1回であることに注意.